お知らせ

グルテン・カゼインフリーの食事療法で改善した男性更年期障害        

【症例】55歳、男性。

【主訴】四肢のしびれ、便秘、食欲低下、倦怠感、不眠。

【病歴】20XX年11月より、うつ状態に対して他院での投薬開始。20XX+1年2月より食欲低下あり。4月より手足のしびれが出現。就寝中はしびれを認めない。お風呂で温めてもしびれは改善しない。日中の倦怠感あり。不眠、便秘、右上腕痛、左第5趾痛あり。20XX+2年2月中旬に当院初診。

【内服薬】降圧剤、睡眠導入剤3種類。

【身体所見】血圧105/72mmHg, 舌は紫紅色, 舌下静脈怒張あり, 腹力3/5, 臍傍部や下腹部の圧痛なし。

【検査所見(主に異常値)】

Cr1.09, BUN26.2, TC273, LDL188, TG165, 遊離テストステロン5.6

【治療経過】初診時は、高血圧症、不眠、男性更年期障害に対して柴胡加竜骨牡蠣湯を処方。そして、舌に著明な瘀血所見を認める便秘症に対して、整腸剤と通導散を処方した。1ヶ月ほど同薬や補中益気湯の追加などで経過をみたところ、便秘は軽快したものの、四肢のしびれなどは改善を認めなかった。同年3月下旬に、毎日の食事内容アンケートを記載してもらったところ、パン・麺類などのグルテン含有加工食品、牛乳・ヨーグルトなどカゼイン含有食品、炭酸飲料などの糖質摂取過多が目立ったため、グルテン・カゼインフリーそして糖質制限など食事指導を行った。2週間後、グルテン・カゼインフリーの食事に変えたところ、倦怠感(特に昼休み以降のどっとした疲れ)がほぼ消失し、便通も毎日認めるようになった。そのような状態は3年ぶりとのことであった。4月下旬より睡眠導入剤を2種類に減らしたが、問題なし。5月上旬には、四肢のしびれも気にならなくなってきた。6月上旬にはしびれはほとんど感じなくなった。血圧も改善してきたため、降圧剤は合剤から単剤に変更となった。舌先端のぴりぴり感が新たに出現。ゼロサーチで空腸の炎症所見は認めず、胃と舌尖部にTNF+, HP+, 糞線虫+で、半夏寫心湯でいずれのTNFも消失すると推定されたため、同薬を処方。定時薬は柴胡加竜骨牡蠣湯のみとした。7月上旬、手のしびれはまったく気にならなくなった。舌の症状は投薬なしで経過をみたいとのこと。柴胡加竜骨牡蠣湯は肝臓、胃、空腸のTNF増加するため、継続不要と判断し投薬終了とした。初診時の主訴はすべて改善していたため、終診とした。

【考察】西洋医学的には男性更年期障害として対応することとなった症例でしたが、主にグルテン・カゼインフリーの食事療法を導入したところ、3年来の症状が2週間で劇的に改善しました。東洋医学的には著明な瘀血を認めていたため、やはり食生活に問題があることを当初より確認すべきでした。私はこの症例をきっかけとして、グルテン・カゼインによる健康障害を明確に認識させられました。この症例では、グルテン・カゼインというタンパク質がゾヌリン分泌を介して空腸にリーキーガット症候群を起こし、四肢末梢神経の慢性炎症、副腎疲労、松果体機能低下などから、多彩な症状を呈したと推測されました。慢性疾患の治療において、グルテン・カゼインフリーの食事療法は必須です。

【備考】患者さんの同意を得て症例報告しております。